力学 物理学

力学の問題を考える手順

ここまでで、力学のモデルを考える上での基本的なルートが出揃いました。

まずは手順に従って運動方程式を立てます。
これまでの講義からも分かるように、運動方程式を軸に考えていくことが重要になります。

運動方程式を立てる

1. 作図をする

力学の問題を考えるとき、最初に行うべきことは **図を描くこと** です。
問題文だけを読んで式を立てようとすると、力の向きや物体の運動方向を見落としやすくなります。

まずは、物体の位置関係や運動の様子が分かるように、簡単な図を描きます。
たとえば、斜面上を運動する物体であれば、斜面、物体、重力、垂直抗力、摩擦力などを図に書き込みます。

この段階では、図をきれいに描くことよりも、

$$
\text{どの物体に、どの力が、どの向きに作用しているか}
$$

を整理することが重要です。

2. 軸を設定する

次に、座標軸を設定します。

力や加速度はベクトル量なので、どの方向を正にするかを決めておく必要があります。

軸の取り方に決まりはありませんが、基本的には **運動の向き** や **加速度の向き** に合わせて軸を取ると、計算が簡単になります。

たとえば、斜面上の運動では、水平・鉛直方向に軸を取るよりも、斜面に沿った向きと斜面に垂直な向きに軸を取る方が便利です。

このとき、力が軸に平行でない場合は、力を軸方向に分解する必要があります。

3. 物体に作用する力を書く

軸を設定したら、物体に作用する力をすべて書き込みます。
力を探す順番は「場の力、接触力、慣性力」になります。

場の力

場の力とは、物体が接触していなくても作用する力です。
代表例は重力です。
$$
\vec{F}_g=m\vec{g}
$$
地球上の物体には、基本的に鉛直下向きに重力が作用します。

接触力

接触力とは、物体同士が接触することによって作用する力です。
代表例として、張力、面からの抗力などがあります。
面から受ける抗力は、面に垂直な成分である垂直抗力と、面に沿った成分である摩擦力に分けて考えることができます。

慣性力

非慣性系で問題を考える場合には、慣性力を考えることがあります。

たとえば、加速する電車の中から物体を見る場合、物体には加速度と逆向きに慣性力が作用しているように見えます。
ただし、慣性系で考える場合には慣性力は導入しません。

4. 運動方程式を立てる

力を書き込んだら、運動方程式を立てます。

基本形は
$$
m\vec{a}=\vec{F}
$$
ですが、実際の問題では軸ごとに成分表示します。

たとえば、$x$ 軸方向については
$$
ma_x=F_x
$$
$y$ 軸方向については
$$
ma_y=F_y
$$
のように書きます。
特に重要なのは、**設定した軸の正の向きに注意すること** です。
力が正の向きなら正、負の向きなら負として式に入れます。

作用する力が複数ある場合は $\vec{F}$ は合力となり
$$
m\vec{a} = \sum \vec{F}
$$
右辺には、物体に作用するすべての力の合力を書きます。

運動方程式を立てた後

運動方程式が立てられたら、次に
$$
\text{この運動方程式を解くのか}
$$

あるいは
$$
\text{別の物理量の関係式に変形して使うのか}
$$
を考えます。

力学の問題では、いつも運動方程式を直接解けばよいとは限りません。
求めたい物理量によって、使うべき関係式が変わります。

運動方程式を直接解く場合

運動方程式から加速度がすぐに求まる場合は、

$$
\vec{a}=\frac{\vec{F}}{m}
$$

とします。

加速度が分かれば、速度や位置を求めることができます。
加速度は速度の時間微分なので、

$$
\vec{a}=\frac{\diff \vec{v}}{\diff t}
$$

です。
したがって、
$$
\frac{\diff \vec{v}}{\diff t}=\frac{\vec{F}}{m}
$$

を時間で積分すれば、速度 $\vec{v}$ が求まります。
さらに、速度は位置の時間微分なので、
$$
\vec{v}=\frac{\diff \vec{r}}{\diff t}
$$

です。
したがって、速度を時間で積分すれば、位置 $\vec{r}$ が求まります。

つまり、運動方程式から直接運動を調べる場合は、
$$
\text{力} \rightarrow \text{加速度} \rightarrow \text{速度} \rightarrow \text{位置}
$$
という流れになります。
ただし、力 $\vec{F}$ が時間、位置、速度に依存する場合には、単純な積分ではなく、微分方程式として解く必要があります。

運動方程式から導かれる重要な関係

運動方程式は、力学の中心となる式です。

しかし、問題によっては運動方程式をそのまま解くよりも、運動方程式から導かれる別の関係式を使った方が簡単な場合があります。

代表的なものが、次の3つです。

仕事とエネルギーの関係

運動方程式の両辺と微小変位 $\diff \vec{r}$ の内積を取り、経路に沿って積分すると、仕事とエネルギーの関係が得られます。

$$
\frac{1}{2}mv_B^2-\frac{1}{2}mv_A^2
=
\int_A^B \vec{F}\cdot \diff \vec{r}
$$

左辺は運動エネルギーの変化、右辺は力がした仕事を表します。
したがって、

$$
\text{運動エネルギーの変化} \ \Delta K=\text{仕事} \ W_{\text{合力}}
$$

と見ることができます。

この関係は、速度を求めたいときや、移動距離と力の関係が分かっているときに有効です。

特に、時間を直接扱わなくてよいので、運動時間が問題になっていない場合に便利です。

力積と運動量の関係

運動方程式を時間 $t$ で積分すると、力積と運動量の関係が得られます。

$$
\vec{p}_B-\vec{p}_A=
\int_{t_A}^{t_B}\vec{F}\ \diff t
$$

ここで、運動量は

$$
\vec{p}=m\vec{v}
$$

です。

左辺は運動量の変化 $\Delta \vec{p}$ 、右辺は力積 $\vec{I}$ を表します。

したがって、

$$
\text{運動量の変化}\ \Delta \vec{p} =\text{力積} \ \vec{I}_{\text{合力}}
$$

と見ることができます。

この関係は、衝突や短時間に大きな力が作用する問題でよく使われます。

モーメントと角運動量の関係

運動方程式の両辺に、左から位置ベクトル $\vec{r}$ を外積すると、「モーメントと角運動量の関係」が得られます。

$$
\frac{\diff \vec{L}}{\diff t}=\vec{M}
$$

ここで、角運動量 $\vec{L}$ は

$$
\vec{L}=\vec{r}\times \vec{p}
$$

力のモーメント $\vec{M}$ は

$$
\vec{M}=\vec{r}\times \vec{F}
$$

です。
ここでの $\vec{M}$ は、物体に作用する力のモーメントの合計を表します。

この関係は、回転運動や中心力の問題で重要になります。
特に、力のモーメント $\vec{M}$ が $\vec{0}$ の場合には、

$$
\frac{\diff \vec{L}}{\diff t}=0
$$

となるため、角運動量が保存されます。

求めたい量に応じて関係式を選ぶ

力学の問題では、最初に運動方程式を立てることが重要です。
しかし、その後にどの式を使うかは、求めたい物理量によって変わります。

例えば、
速度や位置を時間の関数として求めたい場合は、運動方程式を直接解きます。
速度と位置の関係を求めたい場合は、仕事とエネルギーの関係が便利です。
衝突の前後の速度や運動量を考える場合は、力積と運動量の関係を使います。
回転運動や円運動、中心力の問題では、モーメントと角運動量の関係を使います。

つまり、力学の問題では

$$
\text{どの物理量の関係が必要か}
$$

を判断することが大切です。

まとめ

力学の問題を考える基本手順は、次のようになります。

作図する

軸を設定する

物体に作用する力を書く

運動方程式を立てる

求めたい量に応じて式を選ぶ

力学の問題では、いきなり公式を使うのではなく、まず運動方程式を軸にして考えることが重要です。

運動方程式を立てた後、

経路に沿って積分する→仕事とエネルギーの関係
時間で積分する→力積と運動量の関係
位置ベクトルとの外積を取る→モーメントと角運動量の関係

のように、必要に応じて関係式を選びます。

このように考えると、力学のさまざまな公式がばらばらに存在しているのではなく、すべて運動方程式を出発点としてつながっていることが分かります。

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