力学 物理学

ニュートン力学 - 力

力とは何か (基本概念)

力学で大事なことは「力がどうなっているか?」を考えることになります。

日常で「力」という言葉は様々な場面で使用しています。しかし、物理における「力」は

・ 物体の運動状態を変化させる原因

・ 物体を変形させる原因

として扱います。

1つ目について
「運動状態の変化」とは具体的に何を指すかと言えば、「速度 $\vec{v}$ の変化があるか?」ということになります。

速度 $\vec{v}$ に変化があれば「力」が作用している。
速度 $\vec{v}$ に変化がなければ「力」が作用していない、或いは作用していてもつり合っている。(力がつり合って要る場合、運動状態は変化しません)

ことになります。

2つ目については
「物体の形を変えるもの」を「力」と呼びます。

例えば、ゴムボールを握るとボールの形が変形します。この時、「ボールに力が作用した」と考えます。

続いて、「力の種類」についてです。
力学における力の種類は大きく分けて3種類あります。

・ 場の力
・ 接触力
・ 慣性力

の3つになります。

力の分類

場の力

「場の力」とは「その空間自体が変化して作用している力」になります。「重力場、電場、磁場」などがあります。
「重力場」は力学のモデルで多く使用され、「電場・磁場」は電磁気学でよく使用されます。
ここでは「重力場」だけ押さえて置けは十分です。所謂「重力」を指しています。

接触力

「接触力」については文字通り、「「接触している部分から受ける力」になります。
「場の力(重力)」とは違って「接触している」ことが必要になります。
ここではいくつかの「「接触状態」の例を挙げます。

・ 張力 ・・・ 「物体」に「糸」などが設置されていた場合に受ける力

・ 抗力 ・・・ 「物体」が触れている面から受ける力

・ 弾性力 ・・・ 「物体」に「ばね・ゴム」などが設置されていた場合に受ける力
「変形したバネやゴム」が元に戻ろうとする力で「復元力」とも呼ばれる

・ 摩擦力 ・・・ 「摩擦力」は「面から受ける抗力」の接地面成分になります。

慣性力

まず、「慣性」とは何かと言うと、「「物体がそのままの状態を維持しようとすること」を指します。
詳しくは後で扱いますが、慣性力の具体例として「電車の急発進の現象」などがあります。

「電車が急発進」したとき、「「進行方向と逆向きに力を受けた」と感じるものです。
これは停車した列車に乗車している人間が止まっている状態を維持するために、進行方向逆向きの力が作用したと考えます。
皆さんも経験があるかと思います。あの力が「「慣性力」になります。

「慣性力」は、加速している座標系で見たときに現れる見かけの力です。

今後、力学のモデルを考える場合、着目している物体に作用する力を探すことから始めることになります。
この時、力を探す順番は
「場の力」 $\to$ 「「接触力」 $\to$ 「慣性力」

の順になります。
この順で力を探して行けば探し漏れが無く済みます。

力の作図

ここで、具体例について手順に従って力を書き込んでみましょう。

(1) 高い場所から物体を落とした

まずは「場の力」である「重力」を書き込みます。
重力の大きさは「$mg$」となります。この理由については後に説明するので、ここでは「$mg$」として扱って下さい。

続いて、「接触力」については、物体のまわりで接触しているものはありません。強いて言うのであれば「空気」に触れていることになる訳ですが、特に断りが無い場合は無視することができます。
「空気」の「抵抗力」を考える場合はそのことが記述されているので、それ以外の場合は扱わないことになります。

最後に「慣性力」についてですが、これは何か乗り物等に乗った状態で移動している場合に作用することになります。別の言い方をすると、観測者が運動(移動)している場合に考える力になります。この場合、地上に固定された座標系である「慣性系」とは別に車内に設定した座標系の「並進座標系」を考えることになります。
この例では乗り物に乗った状態ではないので「慣性力」は無いことになります。

(2) 天井に吊るされている状態

左:糸の場合
まずは「場の力」」である「重力 $mg$ 」を書き込みます。
続いて「接触力」は物体の上部で糸と接触しているので、糸の「張力 $T$ 」が作用しています。
最後に、乗り物に乗った状態ではないので「慣性力」は無いことになります。

右:ばねの場合
まずは「場の力」」である「重力 $mg$ 」を書き込みます。
続いて「接触力」は物体の上部でばねと接触しているので、「ばねの弾性力(復元力) $f$ 」が作用しています。
最後に、乗り物に乗った状態ではないので「慣性力」は無いことになります。

(3) 糸でつながれている物体が右に引っ張られる

まずは「場の力」」である「重力 $mg$ 」を書き込みます。
続いて「接触力」は物体の右側で糸と接触しているので、糸の「張力 $T$ 」が作用しています。
また、物体は床と接しているので、「(接触面からの) 抗力 $R$ 」が作用しています。
最後に、乗り物に乗った状態ではないので「慣性力」は無いことになります。

(4) 斜面を滑り降りる物体

まずは「場の力」」である「重力 $mg$ 」を書き込みます。
続いて「接触力」は物体は斜面と接しているので、「(斜面からの) 抗力 $R$ 」が作用しています。
最後に、乗り物に乗った状態ではないので「慣性力」は無いことになります。

注)
例題(3), (4) では「軸と力の向き」あるいは「「進行方向と力の向き」が一致しないものが含まれています。この様な場合はモデル図を描いた後、運動方程式を建てる場合は成分の分解を行う必要が出てきます。

ここで、接触面から受ける「抗力」について簡単に説明をしておきます。
細かくは摩擦力のところで説明します。

まず、面からの抗力の正体は「分子間力」で「電気的な力」です。
個別の分子や原子から受ける反発する力になります。
個別の分子や原子の力を1個1個考えるのは困難なので、これらの力をまとめて1つの力とし「「抗力 $R$ 」と表します。

そして、この「抗力 $R$ 」の成分を分解し、垂直方向の成分を「垂直抗力 $N$ 」と呼び、平行方向の成分を「摩擦力 $f$ 」と呼びます。

「抗力 $R$ 」の傾きは平行方向から受ける力によって変化します。
左側から力を受けると図のように物体と床が近づいて反発が大きくなり左に傾きます。
右側から力を受けると図のように物体と床が近づいて反発が大きくなり右に傾きます。

万有引力の法則

ここで、「重力」について説明します。

先に結論から言うと、「重力」は「「万有引力」に由来しています。
ニュートンが発見した「万有引力の法則」は「$2$ つの物体の間に作用する力」について記述したものになります。

「リンゴが落ちるのを見て万有引力を思いついた」なんて逸話が知られています。
もう少し細かく言うと、「リンゴは下に落ちるのに何故、月は落ちないのか?」という疑問を突き詰めたら行き着いた結果という逸話です。しかし、本当の所はわかりません。弟子が後から話を作ったという説もあります。

さて、話を戻すと、万有引力は $2$ つの物体の間に作用し、
$$
\begin{aligned}
F =G \frac{m_1 m_2}{r^2}
\end{aligned}
$$

と表されます。

この法則のポイントは

- $2$ つの質量 $m_1,\ m_2$ に比例する
- $2$ つの物体間の距離 $r$ の $2$ 乗に反比例する
- $2$ つの物体を結ぶ直線上で作用する

となります。

「引力」なのでお互いが「引き合う方向」に力が作用します。
比例定数である「$G$」は「万有引力定数」と呼ばれる値で「 $G=6.673 \times 10^{-11} \ \text{Nm}^2 /\ \text{kg}^2$ 」です。
この $2$ つの力は「作用・反作用の関係」にあり、
「質量 $m_1$ の物体が質量 $m_2$ の物体を引く力」と
「質量 $m_2$ の物体が質量 $m_1$ の物体を引く力」は「大きさが同じ、向きが逆」となります。

「万有引力の法則」を踏まえて、「(地球における) 重力をどう考えるか」について説明していきます。

話を簡単にするために、地球の自転・公転の影響は無視するとします。
モデル図を描くと図のようになります。力は重心で作用しているとします。

注)
物体と地球の縮尺は正しくないです。あくまでもイメージ図と考えて下さい。

万有引力は $2$ つの物体、つまり「質量 $M_E$ の地球」と「「質量 $m$ の物体」の間に働き

$$
\begin{aligned}
F = G \frac{M_E\ m}{(R_E+h)^2}
\end{aligned}
$$

と表されます。
ここで、$2$ 物体間の (重心の) 距離である $r=R_E +h$ において、通常 $h << R_E$ であるため $R_E+h \simeq R_E$ と近似すると $$ \begin{aligned} F = G \frac{M_E\ m}{(R_E+h)^2} \simeq &= G \frac{M_E\ m}{R_E^2} \\ \\ &=m\ \frac{GM_E}{R_E^2} \\ \\ &= mg \end{aligned} $$ と表すことができます。 $\displaystyle \frac{GM_E}{R_E^2}$の部分が「重力 $mg$ 」の「 $g$ 」に対応しています。 「 $G,\ M_E , R_E$ 」は定数なので「 $g$ 」も定数になります。 この「 $g$ 」を「重力加速度」と呼び、値は $$ \begin{aligned} g \simeq 9.80665\ \text{m/s}^2 \end{aligned} $$ となります。一般的には「「 $g=9.8\ \text{m/s}^2$ 」で知られています。 さて、前述で「通常 $h << R_E$ であるため」と扱いました。実際にどれくらいまで許容できるのか検討しておきましょう。 $$ \begin{aligned} F = G \frac{M_E\ m}{(R_E+h)^2} =G \frac{M_E\ m}{\left[ R_E\left( 1+\displaystyle\frac{h}{R_E}\right) \right]^2} \end{aligned} $$ 分母において $R_E$ を括り出すと $\displaystyle \frac{h}{R_E}$ の比率が重要であることが判ります。つまり、重力の変化は $\displaystyle \frac{h}{R_E}$ の大きさで決まります。 日常的な高さでは $\displaystyle \frac{h}{R_E}$​ は極めて小さい値になります。 そこで、実際の数値を用いて妥当性を検討してみましょう。 地球の半径 $R_E$ は $$ \begin{aligned} R_E \simeq 6.38 \times 10^6\ \text{m} = 6.38 \times 10^3\ \text{km} \end{aligned} $$ として計算します。 $h_1=1 \text{m}$ の場合 $$ \begin{aligned} \frac{h_1}{R_E} = \frac{1}{6.38 \times 10^6} = 1.6 \times 10^{-7} \end{aligned} $$ となるので $$ \begin{aligned} 1+\frac{h_1}{R_E} = 1 + 0.00000016 = 1.00000016 \end{aligned} $$ となります。 $h_2=10 \text{m}$ の場合 $$ \begin{aligned} \frac{h_2}{R_E} = \frac{10}{6.38 \times 10^6} = 1.6 \times 10^{-6} \end{aligned} $$ となるので $$ \begin{aligned} 1+\frac{h_2}{R_E} = 1 + 0.0000016 = 1.0000016 \end{aligned} $$ となります。 $h_3=1000 \text{m}$ の場合 $$ \begin{aligned} \frac{h_3}{R_E} = \frac{1000}{6.38 \times 10^6} = 1.6 \times 10^{-4} \end{aligned} $$ となるので $$ \begin{aligned} 1+\frac{h_3}{R_E} = 1 + 0.00016 = 1.00016 \end{aligned} $$ となります。 これらの結果より、地表からの高さ $h$ が「数 $\text{km}$ ぐらい」では無視してしまって問題ないと言えます。 では、どれくらいなら無視できないかと言えば、例えば「国際宇宙ステーション(ISS) 高度約 $400\ \text{km}$ 」で考えてみると $$ \begin{aligned} \frac{h}{R_E} = \frac{400\ \text{km}}{6.38 \times 10^3\ \text{km}} = 0.06269 \end{aligned} $$ となるので $$ \begin{aligned} 1+\frac{h}{R_E} = 1 + 0.06269 = 1.06269 \end{aligned} $$ となります。 こうなってくると、地球の半径の有効数字 $3$ 桁に対して、$\displaystyle 1+\frac{h}{R_E}$ も有効数字 $3$ 桁目に関わってくるので完全に無視することは出来ないことになります。 言い換えれば、「「国際宇宙ステーションぐらいの高度にならないと無視しても問題ない」と言えます。 力が運動をどのように変化させるのかを定量的に表したものが、ニュートンの運動法則です。 次は「ニュートンの運動法則」の説明をします。 次に読む:ニュートンの運動の法則

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